技藝院 > 技藝院について
富山大学芸術文化学部附属 技藝院(文化財保存・新造形技術研究センター)のウェブサイトをご覧いただき、ありがとうございます。
技藝院は、日本の伝統工芸に基づく手技とデジタル造形技術を組み合わせ、保存と継承の新たなかたちを探る教育研究拠点として、2020年に設立されました。文化財の修復、造形への応用、地域資源のアーカイブ化、文化の伝達、国際的な発信に至るまで、複数の専門部門が連携し、知と技の循環を推進しています。
伝統技術の継承に取り組む職人や実務者の皆さまへ。
技藝院は、技術の記録・再現・分析、そして次世代教育の協力拠点となることを目的としています。素材や構造、用途、地域性を科学的に読み解き、3D計測やCT解析、環境評価などを活用し、地域の技術資源を“共有可能な知”として整理・蓄積しています。
文化財保存に関する国際機関や大学との連携も進んでいます。
デジタルアーカイブや仮想展示といった手法は、物理的な制約を超えて文化を伝える手段として有効です。技藝院では、日本の地域文化を外部に開く回路として、英語での研究発信、バーチャルミュージアムの構築、国際共同研究の展開に取り組んでいます。多言語・多文化への対応にも、今後、力を注いでまいります。
そして、表現の未来と社会の変化に向き合う、学生や若手研究者の皆さまへ。
デジタル生成技術による作品と職人の手仕事が、同じ土俵で評価される場面が増えています。こうした状況のなかで、技藝院は、現代的技術と併走しながら、自らの手を動かし、文化を読み解き、人と社会とをつなぐ力を重視しています。その実践の積み重ねを通じて、これからの時代に求められる資質が育まれると考えています。
北陸・富山という風土に立脚しつつ、外部とつながる場であり続けるために、技藝院は今後も、実務者・研究者・学生との協働を広げてまいります。私たちの活動にご関心をお寄せいただき、新たな関係が築けましたら幸いです。
この度、技藝院センター長という重責を拝命いたしました内田和美と申します。これまでの経験と情熱を注ぎ込み、新たな使命を胸にこの職務に臨むこととなりました。
日本の工芸は、長い歴史と伝統をもっており長きにわたり日本の文化を支え、その美意識と技術を未来へと繋いできました。また、私たちのアイデンティティを形成する重要な要素です。グローバル化が進む現代においてこれらの価値をどのように次世代に伝え、かつ発展させていくことが当センターの果たすべき役割だと強く感じております。
就任にあたり、当センターの果たすべき主要な使命は大きく3つの柱と捉えました。
第1に、日本の誇る文化財修復技術に、今日の最先端を走るデジタルトランスフォーメーション(DX)を高度に融合させることです。古来より培われた匠の技は計り知れない価値を持ちますが、これにAIを活用した劣化予測、高精細な3Dスキャンによる現状把握、バーチャルリアリティを用いた修復シミュレーションなど、最新のデジタル技術を組み合わせることで、より精緻で効率的な修復プロセスを実現し、貴重な記録と技術を後世へ確実に継承することが可能となります。伝統と革新の融合こそが、文化財保護の新たな地平を切り拓くと確信しております。
第2に、日本の優れた工芸品が持つ独創的な美意識、精緻な技術、そしてその背景にある深い精神性を、国際社会へと力強く広げていく役割を担います。デジタルアーカイブの充実、オンラインでの没入型展示会の開催、VR/AR技術を活用した工芸体験の提供などを通じ、地理的・時間的制約を超えて世界中の人々が日本の工芸に触れ、その魅力を深く理解できる機会を創出いたします。さらに、オランダとの「技の道」締結を通じた国際的な共同研究など、新たな工芸文化の価値が生まれるハブとなることを目指します。
そして第3に、大学教育機関との連携を通じて次世代の芸術文化教育と、その次代を担う若手の人材育成を強力に推進してまいります。伝統技術の奥深さを基盤としつつ、現代社会のニーズや自動車産業技術との融合、デザインを含む異分野の知見を積極的に取り入れた「新たな芸術文化」の創出を後押しします。学生たちがDXや国際交流の最前線に触れ、理論と実践を融合させながら、創造性豊かな表現を追求できる環境を整備することで、芸術文化の新たな可能性と価値を切り拓き、国際的に通用する人材を育成してまいります。
これらのチャレンジは、私たちセンター単独では成しえません。技藝院内外の専門家の皆様、行政機関、各研究機関、そして国内外の企業や大学との緊密な連携と協業が不可欠です。皆様の豊富な知見と温かいご協力を賜りながら、この新しい時代における文化財保護、新たな工芸、そして未来を担う人材育成の道を、共に力強く切り拓いていきたいと願っております。
日本のこころ豊かな文化遺産を未来へ繋ぎ、その価値を世界に発信するため皆様のご支援とご指導を心よりお願い申し上げ、就任のご挨拶とさせていただきます。
★は部門長 メンバーは芸術文化学部教員、研究員から構成
2024.12.6
オランダのNPO法人「技の道」との学術交流協定の締結
2024.7.24
富山大学医学部アイドリング脳科学研究センターとのコラボレーション 技藝院センター長 林 暁
2024.7.24
漆塗りサキソフォンの制作 技藝院センター長 林 暁